さ行の不動産用語解説集一覧です。
債権譲渡
ある債権をその同一性を保ちつつ移転させる旧債権者(譲渡人)新債権者(譲受人)トの間の契約のことをいいます。債権が譲渡されると、譲渡人から譲受人に債権の帰属主体が変わります。しかし、物が譲渡されても、その物自体には何の変化をないように、債権自体にはなんの変化もありません。もともと債権自体に附属していた担保権や、従たる権利はそのまま消滅することなく譲受人に移転します。
例えばA(債権者)はB(債務者)に対して1,000万円のお金を貸し付けていて、弁済期が来年の3月となっていた場合、Aがその1,000万円の債権を早くお金に変えたいと思い弁済期前に友人Cに800万円で債権を譲渡(売買)するようなことです。
錯誤
「意思」と「表示」の不一致を表意者自身が知らないで意思表示をしてしまう場合があります。これを錯誤による意思表示をいいます。例えば、A家屋を購入するつもりでB家屋の購入申し込みをしてしまったというような場合です。
この場合、民法は思い違いをした人を一応保護するのが適切と考え、法律行為の要素(重要部分)に錯誤があるときは無効としています。なお、錯誤を無効としているのは、表意者を保護するためであるから、その者が何ら無効を主張せず、また無効を主張する意思もない場合には、原則として相手方や第三者が無効を主張することはできないと解されています。ただし、表意者に「重大な過失」があるとき、要するに著しい不注意によってそのような思い違いをした場合には、意思表示を受ける相手方とのバランスを考慮して、表意者自らが無効であると主張することはできないとしています。従って、有効になってしまうということです。
錯誤による無効は、善意の第三者に対しても対抗することができます。
37条書面
宅地建物の取引に関する契約が成立しても、その契約の内容が不明確であるため、後日になって、当事者間で紛争が生じることが多いわけです。このような事態を防止するため、成立した契約の内容のうちで主要なものについて書面に記載させることにより、契約内容の明確化を図ることとし、また、これにより買主等にも注意を喚起させることとしたのです。
宅地建物取引業者は、宅地また建物の売買または交換に関し、みずから当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方および代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
市街化区域
市街化区域にするところは、次の2つのものがあります。
- すでに市街地を形成している区域(既成市街地)
- おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(計画開発区域)
市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域をいいます。これは、全面的に開発を禁止するというような区域ではなく、開発の見通しが確立されるまでは当分の間、市街化を抑制しようというものです。
時効
真実の権利関係と異なる事実状態が長年にわたって継続した場合、その事実状態をそのまま尊重して権利関係を法が認める制度をいう。取得時効と消滅時効の2種類があります。
それが認められる根拠として従来から次のことがいわれています。
- 継続した社会秩序の事実状態を尊重することによって法律関係全体の安定を図ることができること。
- 時間経過とともに困難となる証拠保全の救済。
- 権利の上に眠るものは法の保護に値しないこと。
取得時効の例として、Aは自分所有する土地に家を建て、20年間にわたって平穏に生活を営んでいました。ところが家の敷地の一部がBの所有であることがわかりました。AはBからその部分について明け渡しを要求されています。しかしAはBの土地を時効取得できるのです。
消滅時効の例としてCはDに100万円貸しましたが、返済日が到来してもDは返済せず、Cもそのうち返してくれるだろうと思っているうちに、請求しずらくなり、既に弁済期から10年が経過しました。ところがCもお金が必要になり思い切ってCはDに請求しました。しかし、Dは返済しなくてもよく、Cの債権は時効消滅したのです。
質権
債権者が債権担保として債務者又は第三者から受け取った物を債務の弁済があるまで留置して債務の弁済を間接的に強制しつつ、弁済がない場合にはその物から優先弁済を受けることができる約定担保物権です。質権には、担保物権の効力である「優先弁済的効力」のほか、「留置的効力」の双方が認められている点が特徴的です。
この留置的効力を発揮させるために、質権設定契約は単に質権設定の合意のみでは足らず、目的物を引き渡さなければならない要物契約です。
質権の種類
質権の種類は、
- 動産質
- 不動産質
- 権利質
に区分して規定しています。
借地権
借地借家法で借地権というのは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことです。いずれも建物を建てることを内容とする場合でなければなりません。資材置場として土地を借りても、駐車場として土地を借りても借地権の設定はできません。
借地上に建てる建物が鉄筋コンクリート造の建物か木造の建物かによる借地権の存続期間の取り扱いの違いはありません。ちなみに借地権の存続期間は下表のとおりです。
最初の存続期間 | 1回目の更新の存続期間 | 2回目以降の更新の存続期間 |
---|---|---|
30年 | 20年 | 10年 |
- ただし、当事者がこれより短い存続期間を定めた場合又は定めなかった場合は上記の期間となります。
- 当事者がこれより長い期間を定めたときは、その定めた期間となします。
借家権
広くは建物の賃借権のことをいいますが、通常は借地借家法の適用を受ける建物の賃借権のことです。建物の一部であっても、アパートの1室のように独立性のある場合は借地借家法の適用がありますが、いわゆる間貸しのように、その室全体に独立性がない場合は借地借家法の適用がありません。また、博覧会や避暑などのために数日あるいは数ヶ月、一時使用(定期借家契約を除く)のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、借地借家法は適用されません。
重要事項の説明
宅地建物取引業法第35条に規定されています。宅建業法上、不動産という商品説明のことを重要事項の説明といいます。物件に関する事項や取引条件などの一定の重要事項を説明することが義務付けられています。要領は下記のとおりです。
- 説明者 宅地建物取引主任者
- 説明時期 契約が成立するまでの間
- 説明の相手方 買主・取得者・借主になろうとする者
- 説明方法 取引主任者が記名押印した書面を交付して、取引主任者証を提示して行う
説明すべき重要事項の項目は、物権に関する事項としては、(1)登記簿上の権利(2)法令にもとづく制限(3)私道に関する負担(4)飲用水・電気・ガス等の供給施設、排水施設の整備状況(5)未完成物件の場合、完成時の形状等。
取引に関する事項としては、(1)代金・交換差金以外に授受される金銭の額及び目的、(2)契約の解除に関する時効(3)損害賠償額の予定又は違約金に関する事項(4)手付金等の保全措置の概要(5)支払金、預り金を受領する場合の保全措置の内容(6)ローンのあっせんの内容及びローン不成立の場合の措置等です。
住宅ローン減税制度
個人が、一定の期間内に、自己の居住の用に供する家屋で、一定の要件に該当する新築住宅を建築するか取得し、または一定の要件に該当する既存住宅を取得し、6ヵ月以内に居住し、その年の12月31日まで居住を続けていた場合で住宅を取得するための借入金等があるときは、居住した年から一定の期間一定額が所得税額から控除されます。
年度により取扱いが異なるため詳細は国税庁ホームページをご参照下さい。
使用貸借
借主がある者を無償で使用収益したのち、その物の返還を約して、相手方(貸主)からその物の引渡しを受けることによって成立する契約です。(第593条)。「物ヲ受取ル」ことを要件とするから要物契約です。
心裡留保
冗談やウソのように、真意と違うことを自分で知りながらする意思表示のことを心裡留保といいます。例えば、買うつもりがないのに、「買います」といった場合です。相手方は、表意者がウソを言ったとは通常思わないので、相手方を保護するために有効とされています。有効ということは、冗談で言ったことが冗談ではすまなくなり、表示どおりの効力が生ずるということです。しかし、相手方がその真意を知っていたり(悪意)、または不注意によって知らなかった場合(過失)は、特に保護する必要がないので、無効としています。なお、無効となる場合にこの無効は、次の虚偽表示の規定を類推して、善意の第三者には対抗できないものと解釈されています。
制限能力者
自己の行為の結果を合理的に判断する能力がないか、または不十分であるため、単独では完全な法律行為(契約など)を行うことができないと法律が決めた者をいう。具体的には成年被後見人、未成年者、被保佐人、被補助人です。
成年被後見人
精神上の障害により、事理を弁識する能力(判断能力のこと)を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者をいいます。
相続
自然人(肉体を有する、いわゆる「ひと」のこと。法人に対する概念)が死亡した場合に、その者が有していた権利義務を、法律の規定または本人の意思(遺言)に基づいて、相続人に包括的に承継させる制度をいいます。